ああブログ

考えたことを書き残す場所

スピッツ「プール」

「プール」は、スピッツ2枚目のアルバム「名前をつけてやる」収録の曲。

ネットでは 「名前をつけてやる」が未だ色あせぬ名盤として語られているけども、

それもこの曲の功績によるところが大きいのかも。

 

君に会えた 夏蜘蛛になった

寝転がって ぐるぐるに絡まって

 

こんな歌い出しで始まるこの曲は、はっきり言えば男女の営みを歌った曲。

「性」という観点さえあれば、一見脈絡のなさそうな歌詞も

おおよそ解釈ができると思われる。

 

独りを忘れた世界に 白い花降りやまず

でこぼこ野原を静かに日は照らす

 

という部分など、非常に情緒的な歌詞でありながらも、

説明するのが野暮に感じられるぐらいそっちの要素に溢れている。

タイトルのプールというのも、皆まで言わないが

椎名林檎のアルバムタイトルの3つ単語をならべたやつ、あれと同じ意味だ。

 

 

ところが、これをもってこの曲はセックスソング、と

解釈を限定させてしまうのは勿体ないことかもしれない。

そういった先入観を全く持たなかったとしても

おそらくこの曲は夏の暑さや、水の青、心地よい浮遊感、

若き日の1ページ…そういったイメージを喚起させてくれるからだ。

 

別に「性」という観点になんか立たなくても

この曲は紛れもなく「プール」であるし、

別に歌詞を深読みなんかしなくても、

美しいメロディとボーカルにノスタルジックなフレーズ、

それだけでこの曲は名曲たりえるのだ。

私はこういったところが、草野マサムネ氏の珠玉の芸だと思っている。

 

 

スピッツというバンドは非常にポップで開かれた存在でありながらも、

ひとたび深読みしようとすれば「死」とか「性」とか、

そんなドロドロとした世界観を投げつけてくる。

普遍的でありながら変態的。

音楽に興味があまりない層と音楽マニア、両方から支持を受ける存在。

純粋な音楽的完成度もさることながら

そういったスピッツの二面性がよく出ているという点において、

彼らの一つの到達点とさえ言える、そんな存在感のある楽曲。

 

(816文字)