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レミオロメン「3月9日」

「3月9日」は、レミオロメンの3枚目(メジャーデビュー後2枚目)のシングル曲。

2ndアルバム「ether[エーテル]」収録。

押しも押されぬ、「粉雪」と双璧をなすレミオロメンの代表作。

 

 

あいにく邪道を行きたがる性分なもので、

今まではアルバム曲だとかマイナー曲を取り上げてきたのが

今日ここに至ってはどメジャー。誰でも知ってる曲のレビュー。

何もしてないのに「このブログもここまできたか」なんて心境になってる。

 

砂埃運ぶつむじ風 洗濯物に絡まりますが

昼前の空の白い月は なんだか綺麗で見とれました

 

初期レミオロメンを特徴付ける大きな要素のひとつは

この何気ない、あまりにも何気ない歌詞だ。

「洗濯物」なんて言葉は、「格好良さ」という評価軸で見れば

かなりマイナスに振り切れた位置に存在しているに違いない。

他の曲でも例を挙げると、

「すきま風」というタイトル(!)の曲では

伸びすぎた爪が割れて

毛布の中 絡まったんだ

長すぎる夜の中

車の音だけ響いた

こんな調子で、藤巻亮太は日常の一瞬、それも

本当に何気ない一瞬を切り取って歌にしてしまう。

 

昼前の空に白い月を見つけて、少しの瞬間目を奪われて、ふっと息をつく。

その程度の心の動き。

そんなものは、たとえば最近巷で溢れている

「絶対泣ける」「涙が止まらない」「最高すぎる」「やばすぎる」…

そんな言葉で表す類のものでは決してないだろう。

言ってみれば、

藤巻亮太は、心を強く鷲掴みにして揺り動かすようなものではなく、

そっと心に触れて、じわじわと手触りや温かさが伝わるような、

そんな日常のふとした瞬間と心の機微を歌う表現者なのだ。

 

この曲に出てくる「あなた」にしたって、

大切な存在の割には驚くほど何もさせてもらえていない。

「大きなあくびをした後で少し照れている」だけだ。

もっと楽しい瞬間も、感情が昂った瞬間もたくさんあっただろう、

だが敢えて「大きなあくびをした後で少し照れている」瞬間を

ピックアップして、光を当てる。

それを目にした時に心に去来した、上手く説明できないなにかを

すくい取って歌にする。

これが、藤巻亮太の真骨頂だ。

 

 

多分、自分が「レミオロメンの名曲を5曲選べ」なんて言われたら、

3月9日はその中には入らないだろう。

なぜなら自分は面倒くさいファンだから。

人が知らないレミオロメンの魅力を知っているという自負が

間違いなく選曲をコアな方へと向かわせる。

しかしそんな自分の色眼鏡を外してしまえば

3月9日という曲は、紛れもなく名曲である。

しかし、この記事を書きあげているうちに

改めてこの曲の魅力を発見した面もあるので、

そのうち「1周回って3月9日が最強だわ」とか

言い出すファンになってるかもしれない。

「1周回って」などと枕詞を付けたがるあたり

私はやはりどう転んでも面倒くさいファンである。

 

 

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