ああブログ

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スピッツとミスチルの「スパイダー」

自分が物心つく前の90年代に黄金期を迎え、

今なお絶大な人気を誇るスピッツミスチル

モンスターバンドってこういうことですよね。

 今回取り上げる曲は

ひとつはスピッツの「スパイダー」。

スピッツのシングル曲の中でもかなりの知名度を誇る楽曲。

PVではマサムネ氏が拡声器を使って歌っている姿が印象的だ。

もう1曲はMr.Childrenの「隔たり」という曲。

こちらはアルバム曲なのでやや知名度が低いか。

 

「隔たり」という曲はこんな歌い出しで始まる。

たった0.05ミリ

合成ゴムの隔たりを

その日君はいやがった

僕はそれに応じる

身も蓋もない、男女の情事の曲である。

ピアノとストリングスだけの演奏は

静かに密やかに事が進んでいくかのよう。

そして盛り上がりが頂点に達する大サビで桜井氏はこう歌う。

君は美しきスパイダー

羽虫が僕

あえて飛び込んでいくんだ

女性をスパイダーに喩えるのは、なんというか

ビジュアル的な意味もあるのだろうけど、流石としか言いようがない。

そして、自分自身をスパイダーに「捕食される側」として認識している。

しかもそれを知りつつ、「君」に

いいようにされることをよしとしている。

 

かたや、草野マサムネ氏。

基本的には奥手で、控えめで、

いわゆる「草食系」であることを自覚しつつも

危なめな欲望もしっかり秘めている。

(少なくとも歌詞の中の「僕」はそういう男だ)

「スパイダー」の歌詞はまさにその危なめな欲望が

あけっぴろげ状態のものになっている。

かわいい君が好きなもの

ちょっと老いぼれてるピアノ

寂しい僕は地下室の

すみっこでうずくまるスパイダー

だからもっと遠くまで君を奪って逃げる

かわいい君を捕まえた とっておきの嘘振りまいて

「誘拐を歌った曲」なんてネットで言われるのも

やむなしといったありさま。

桜井氏もマサムネ氏も、自分自身を「君」よりも矮小な存在

(スパイダー>羽虫、人間>スパイダー)として

認識しているのは面白い共通点。

ただ、決定的に違うのは

マサムネ氏は自分自身が捕食する側になって

君を奪い去ってしまいたいと歌っているところだ。

 

誰かが探しに来る前に

君をさらっていこうかな

たとえ許されないことでも

(「みそか」)

他の楽曲にも、ちらほらとそういう黒い部分を見ることができる。

しかし、男の自分としてはそういうところは

結構共感というか、分かってしまうところだったり。

スピッツのライブに行くとおばちゃん(失礼)、もとい

淑女の方々が約7割を占めている(自分調べ)のだが

少年のような声と透明感、かわいらしい歌詞の中に

ちらっと潜むこういう黒い要素は

彼女たちにも「ギャップ萌え」のような感じで

ポジティブに消化されているのだろうか?

かわいいつもりの醜いかたまり

(「けもの道」)

なんて歌うマサムネ氏は、けっこう確信犯的に

そういうところを出している気がする。

 

一見、草食でやさしそうなマサムネ氏が

時たま自分の欲望全開で「君を自分のものにしたい」と歌っていて、

かたやどう見ても肉食の側であろう桜井氏が

「君のものになりたい」なんていうような歌を歌っていて

そういうところがなんとも面白い。

でもマサムネ氏のスタンスは多分あの人だから

許されてるのであって、

ならうべきというか、モテるやり方なのは

桜井氏の方なんだろう。

合成ゴムも大事だと思うけれども。

 

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